立夏(5/6〜5/20)・小満(5/21〜6/5)の養生
ゴールデンウイーク明けから梅雨入り前の、初夏と言われる時期。
4月からの新しい職場環境や学生生活などでの精神的な緊張状態が連休で一気に緩んで、ほっとしたものの、連休が明けて、新しい環境でうまくやっていけるか心配になったり、自信を失ってしまったりと、いわゆる、五月病になってしまう人がいます。
肩こり、頭痛、めまい、不眠、食欲不振、月経の乱れ、さらには気持ちが塞いだうつ状態、精神的な不安などが現れることが多いようです。
また5月の不調の原因としてお天気も考えられます。
日中は夏のような暑さでも夜は肌寒くなるほど気温差が大きいこと、
また梅雨入り前の頃は気圧の変化で体調を崩しやすいです。気をつけてください。
「どうも調子が出ない」「疲れる」「心がバテてる感じ」の時はまず休養、そして気分転換を。
連休中の乱れた生活リズムから規則正しい生活へ、
夜と昼のメリハリをつけた生活をしましょう。
朝はお布団の中でいつまでもゴロゴロせずに、
夏の盛んな陽気に合わせて、早く起きましょう。
大きく伸びをして、ゆったりと深く長い呼吸をして、
散歩や気功、何か運動することをお勧めします。
「運動をすると、脳内で神経細胞の成長や再生を促すBDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が増え、うつ状態や認知機能の改善につながることがわかっている。運動不足はメンタルにも影響を及ぼす恐れがある」(『日本経済新聞』「カラダづくり」2023/4/22付)。
立夏(りっか)5/6〜5/20
連休明けの精神的な不安、緊張、不眠などを気持ちをゆったりさせて、
規則正しい生活で、食事で和らげ、解消するようにしましょう。
精神的な安定(心の安定)をもたらすには
・補血すること、血を養って血の消耗を改善する、
心血を養う、血行を良くすること、等が考えられます。
・精神・情緒を安定(養心安神)させる食材・中薬を用いる。
【小麦 ひじき 豚・鶏の心臓 百合根 イワシ 卵 龍眼 ハスの実 なつめ 等】
〈豚のハツと百合根の炒めもの〉 補血養心安神
①豚のハツは血抜きして薄切り。酒、醤油、胡麻油、片栗粉をまぶす。
②百合根は一枚ずつ剥がしてきれいに洗い、さっと茹でる。
③インゲンは筋を取り、3〜4cmに斜め切りし、茹でる。
④フライパンに油を引いて熱し、みじん切りした生姜、ネギを炒める。
⑤香りが立ったら①を入れ、炒める。
⑥色が変わったら②、③を加え炒め、塩、胡麻油、酢で味を整える。
・豚のハツ(心臓):心気を養う。安神作用。
・百合根:陰液を滋養して体を養う。心の熱を鎮める。
不眠症の改善、精神を安定させる。せき、喉の渇き。美肌。
・インゲン:脾の気を補う。
*乾燥百合根は水で戻して使います。
スープ類ならそのまま入れて、火を通して食せます。
〈ハスの実の雑炊〉 補血養心安神
①土鍋に水を張り、ハスの実と落花生を3〜4時間浸ける。
②干し椎茸は水で戻して千切り。
③ご飯と②を①に加え、中〜弱火で煮る。
④ご飯が柔らかくなったら醤油・塩で味を整え、
とき卵を回し入れ、三つ葉を散らす。
・ハスの実:心・脾・腎に帰経。血を養い、心を補う。
不眠、動悸、精神的な不安。下痢、おりもの、尿失禁。
・椎茸:胃の気・血の不足を補う。免疫力強化・増強。降コレステロール。
・落花生:肺を潤し、胃の働きを調和。便秘、肌荒れ。
薄皮に補血・止血作用がある。
・卵:体に潤いを与え、血も補う。食物繊維とビタミンCを除く全ての栄養素を含む。
不眠の改善、精神の安定。
・うるち米:脾・胃の気を補う。
〈龍眼・ナツメ・干しぶどうのデザート〉 精神安定 不眠解消
ナツメ6個は刻み、龍眼10gと干しぶどう6gと一緒に15分蒸らす。
・龍眼:心・脾に帰経。補気補血して心と脾の働きを円滑にする。
精神不安、不眠、貧血、健忘。
・ナツメ:脾・胃に帰経。補気補血して胃腸の機能を整える。
疲労、食欲不振、精神不安。
・ぶどう:補気補血、肝・腎の働きを高める。
喉の渇きやむくみの改善。目の疲れ。
干しぶどうはブドウ糖が70〜80%アップし、即効性のエネルギーになりやすい。
素早い疲労回復が期待できる。
小満(しょうまん)5/21〜6/5
本格的な夏に備えて、暑さで消耗しやすい陰液(必要な水分)を補って体を潤し、元気を与え、心の熱を取り除いて、初夏の暑気から体を守りましょう。
〈金針菜と豚肉、干し椎茸のスープ〉 精神安定 清熱 補気補血
①戻した金針菜と干し椎茸は適当な大きさに切り、豚肉と炒める。
②鶏がらスープと戻し汁を①に入れてスープに仕立てる。
・金針菜:体の熱を取り除き、むくみ、ほてりを取る。補血して貧血、月経過少を改善。
別名「忘憂草」。憂うつ感を解消し、精神を安定させる。不眠症の改善。
金針菜(乾物)はぬるま湯に浸けて戻す。戻し汁も使う。
・椎茸:胃の気・血の不足を補う。胃腸の働きを改善。
免疫力強化・増強。降コレステロール。
・豚肉:体に潤いを与える。腎の働きを強化。虚弱体質の改善、疲労回復。
〈金針菜とひじきの炒め煮〉
水で戻した金針菜とひじき、細切りしたニンジンと生姜を炒め煮する。
・ひじき:体の熱をとる。補血。心を養う。カルシウムが豊富。
貧血の改善。しこり、むくみの解消。不眠の改善、精神安定。
炒めた金針菜と野菜をラーメンや焼きそばの具にしても。
〈たっぷりトマトとレタスのせうどん〉 清熱 胃腸の働きを高めて消化を促進
①ミニトマトは半分にカット、レタスはちぎり、合わせておく。
②ピーマンは縦に細切り。
③ほぐした卵にしらす干し入れ、塩と胡椒を少々。
④フライパンを熱し、油を加えて②を炒め、
③を流し入れ、大きめの炒り卵にして取り出す。
⑤①と④をざっくり混ぜて、茹でたうどんの上に盛り、海苔を揉んで散らす。
・トマト:暑熱を解消して体に潤を与える。消化促進。夏バテ解消。
・レタス:体の熱を冷まし、血流を改善。胃の働きを高める。
余分な水分をとり除く。むくみ、便秘の解消。
レタスの芯に含まれる苦味に鎮静作用がある。
・ピーマン:気の巡りをよくして肝の働きを正常にし、イライラや不安感を取り除く。
胃腸の調子を整える。血栓防止のピラジンを含む。
・しらす干し(カタクチイワシの稚魚):補気。血流を改善。脳の活性化、老化防止。
・海苔:体の熱を冷まし、水分代謝を促進。痰、咳、むくみの改善。
〈龍眼・ナツメ・干しぶどうのお茶〉 養血安神・清熱定志
①ナツメ6個は刻み、水800ccで20分煎じる。
②龍眼10gと干しぶどう10gを①に加え、10分ほど煎じる。
③火を止め、緑茶3gを入れ、少し蒸らして飲む。
立夏の同じ材料に緑茶を入れました。清熱作用があります。
・緑茶:体の熱を取り除き、潤いを与える。
喉の渇き、いらだち、精神不安、眠気。
次回は〈梅雨〉の時期の養生について考えたいと思います。
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芒種(6/6〜6/20)・夏至(6/21〜7/6) の養生
立夏〜小満〜芒種〜夏至の間は陽気が上昇し、生き物たちが成長していく時期。
風は南風となり、暑くなっていきます。
夏の食事の基本的な考え方は
・清熱:体の熱を取り除く。
【小麦 黍 小豆 緑豆 ハトムギ 豆腐 粟 アスパラガス アロエ きゅうり 空芯菜 冬瓜 白瓜 なす へちま レタス じゅんさい キウイ スイカ メロンパイナップル レモン 蟹 わかめ のり もずく モロヘイヤ 豆もやし 緑茶 など】
・解暑:熱感、口渇、汗出などの症状の緩和。
【緑豆 トマト インゲン豆 苦瓜 緑豆もやし いちご ココナッツ スイカ
パイナップル メロン レモン など】
・養心安神:血を養い、心を補う(「5月」参照)。
・汗をかきやすく気を消耗するので、補気するものを。
【うるち米 粟 赤米 じゃがいも さつまいも 山芋 かぼちゃ 椎茸 ひらたけ 舞茸 イワシ 鶏肉 牛肉 豚肉 なつめ など】
・生津・止渇(津液を生じさせ体内を潤す・津液不足による乾燥症状の緩和)。
【豆腐 豆乳 アスパラガス おくら 白木耳 きゅうり 白瓜 冬瓜 トマト びわ
梅 オリーブ キウイ ココナッツ スイカ シークワーサ パイナップル 桃 李マンゴー メロン ライチ レモン ぶどう 牛乳 ヨーグルト 緑茶 など】
・湿が脾に留まらないように健脾作用のある食材、
袪湿・利湿、利尿作用のある食材をとるようにする(「梅雨」参照)。
・芒種・夏至の時期は「梅雨」と重なりますので、「梅雨」の項も参考にしてください。
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芒種(ぼうしゅ)6/6〜6/20
穀物の種を蒔き、田植えをする目安となる時期。
夏の暑さと蒸し暑さに負けないように、
暑邪を取り除く(清暑)、気を補う(益気)、体内に留まる湿邪を取り除く(祛湿)。
〈とうもろこしと粟のご飯〉 暑邪と湿邪を除き、体力をつける。
①といだお米(1合)と目の細いザルで洗った粟(20g)は
30分ほど水につけておく。
②とうもろこし(1/2本)の実は外す。
③鍋に、洗ったとうもろこしの皮、鬚、水を入れる。
強火にして沸騰したら弱火で10分位煎じて、濾す。
④炊飯器に水を切った①、②、冷ました③の煎じ液に必要な量の水を加え、炊く。
・粟:清熱作用。消化不良、むくみ、便秘改善。
・とうもろこしの皮も利尿作用がある。
○梅雨の初めの頃の、肌寒いような日には、温かいものを。
〈大葉とじゃがいものお粥〉 お腹を温め、補気する。湿邪を取り除く。
①じゃがいも(1個)は皮をむき、さいの目に切る。
②大葉(3枚)、生姜(皮付き)はみじん切り。
③鍋に水800cc、米(80g)、①を入れ、粥を作る。
④粥に②を加え、塩で味を整える。
・うるち米:脾胃の気を補い、体力をつける。
・じゃがいも:補気し、脾の働きを高める。
・大葉:気の巡りを促進。
○「むくみ」の改善、解消に
〈豆サラダ〉
①サヤインゲン、枝豆、そら豆、グリーンピースはそれぞれ塩を加えて茹で、
枝豆はさやから出す。サヤインゲンは枝豆の大きさくらいに切る。
②たまねぎはみじん切りし、辛子、塩・胡椒、オリーブオイルを混ぜ合わせる。
③ボールに①②を入れ混ぜ合わせる。
・さやいんげん:脾・胃の気を補益。湿邪を取り除く。食欲不振 胃もたれ むくみ。
・枝豆:脾の機能を高める。補気・補血。湿邪を取り除く。
むくみ、夏バテ防止 疲労回復 便秘 酒酔い。
・そら豆:脾・胃の気を補益。脾の機能を高める。息切れ むくみ 疲労回復。
・グリーンピース:脾・胃の気を補益。補気。疲労 むくみ。
・玉ねぎ:胃の働きを調和し、胃気を下降させる。気や血を巡らせる。
しゃっくり ゲップ。
・豆は胃腸の働きを高め、水分代謝を改善します。
○豆の展開
上記の〈豆サラダ〉または一種類あるいは数種類の豆をとうもろこしやハトムギなどと組み合わせて、
・わかめ/海藻類を足し、生姜+酢の物/ポン酢ドレッシングであえる。
・温かいご飯に混ぜる+おかか。
・さいの目に切ったパイナップルと一緒にチャーハンの具に。
パイナップル:暑気あたり イライラ 喉の渇き。
・キムチスープに入れる。
・みじん切りした茗荷、大葉を混ぜ、おろし生姜と一緒に冷奴に添える。
・豆を軽く潰して鶏ヒキ肉(補気、お腹を温める)、みじん切りにしたネギと混ぜて
つくねを作り、焼く、揚げる、あるいはそのままで、スープなどに入れる。
〈とうもろこしの鬚と黒豆のお茶〉 ティーポット一回分。
①煎り黒豆(5g)(黒豆茶のティーバックでも可)。
②とうもろこしの鬚(一本分)はよく洗い水気を切る。
③ティーポットに①と②を入れ熱湯を注ぎ3分くらい蒸らしてからカップに注ぐ。
〈じゃがいも+わかめのお味噌汁〉むくみ改善。高血圧の予防。
夏至(げし)6/21〜7/6
一年で最も陽気が強くなり、昼の時間が長くなる時期。
陽気が旺盛になる季節のため、汗をかき、喉が渇き、体も熱を持ちます。
暑さでイライラしたり、精神的に不安定になったり。
体の熱、心の熱を取り(清心)、精神を安定(安神)させましょう。
平性・涼性(冷やす性質)の食材を使い、スープ、お粥などに仕立てると
食べやすいかもしれません。
〈ハトムギと枝豆のサラダ〉
①ハトムギは数時間水につけてから、柔らかくなるまで煮る。
②枝豆は塩茹でし、さやから出す。
③ミニトマトは四つ割り、きゅうりは枝豆くらいの大きさに切り、塩少々。
④ボールに酢・オリーブオイル・塩を入れ、ドレッシングを作る。
⑤④にハトムギ、枝豆、トマト、水気を切ったきゅうりを加え混ぜる。
塩で味を整える。
⑥器にレタスを敷き、⑤をのせる。
・ハトムギ:脾の働きを高め、水分代謝を促す働きがあり、余分な水を排出。
湿気によるむくみなどの緩和。体にこもった熱を冷ます。水いぼ、肌荒れ。
・トマト:生で食べると、体に溜まった熱を冷ます。体に潤いを与える。喉の渇きに。
暑気あたりの解消。
リコピン(抗酸化、抗老化)、ビタミンC、Eが多い。老化防止や美肌に効果。
トマトは加熱すると冷やす作用が弱くなります。
・きゅうり:約95%が水分。体の熱を冷ます。喉の渇き。
利尿作用が高く、余分な水を排出。
・レタス:体の熱を冷ます。むくみや便秘の解消。
「芒種」で紹介した〈豆サラダ〉は胃腸を丈夫にし、水分代謝を良くする、性質が「平」性の豆を使ったサラダで、むくみがちな方が予防も含めて食べるといいと思います。
それに対してこちらの〈豆サラダ〉は枝豆を除いて、体の熱をとる食材ばかりなので
(「涼」「微寒」「寒」性)、湿度が高く、暑い時に食べてください。
〈トマトと豆腐のたまご炒め〉滋陰清熱安神
①ボールに卵を割り入れ塩を入れよく混ぜる。
②トマトと豆腐はさいの目に切る。
③フライパンに油を入れ①を流し入れ炒めて取りだす。
④油を足し、②を軽く炒めて塩を加え、③を戻して混ぜ合わせる。
・卵:五臓に入る。体に潤いを与える。補血し、精神を安定させる。
・豆腐:体の熱を冷ます。気を補って津液を生じさせる。
・トマト:〈ハトムギと枝豆のサラダ〉参照。
〈甘いもの〉
*ベースの緑豆
緑豆は柔らかくなるまで煮る。
きび糖、はちみつ、塩で好みの味にして、少し煮る。
・緑豆ぜんざい
①白玉粉で小さめのお団子を作り、沸騰した湯で茹で、水にとる。
②器にベースの緑豆を入れ、白玉団子を加える。
夏の暑い日に冷やして食し、体の暑さをとりましょう。
・緑豆入り豆乳
粗熱が取れたベースの緑豆をコップに入れ、豆乳を注ぎ、レモンを少々絞る。
この飲み物は、緑豆で皮膚の赤みや火照りをとります。
・緑豆のココナッツミルクかけ
ベースの緑豆にココナッツミルク(適量)を加え、味を整える。
あるいは
柔らかく煮た(甘みをつけていない)緑豆にはちみつ、ココナッツミルクを加える。
ココナッツ:暑さによる熱を冷ます。喉の渇き。
暑さでイライラしていたら、心の不調を感じていたら、これらの〈甘いもの〉と一緒に
金柑の蜜煮(解鬱)、龍眼(養心安神)、蜜ナツメ(安神)なども合わせてどうぞ。
小暑(7/7〜7/22)
小暑 本格的な夏の始まり。
初候:温風至(あつかぜいたる)南風が吹いて暑くなる。
次候:蓮始開(はすはじめてひらく)雨の日々、蓮の花が咲く。
末候:鷹乃学習(たかすなわちわざをならう)鷹のヒナが飛ぶ練習をする。
養生天人功『肺と大腸を強化する気功』の第六式「熊鷹回肩」が浮かびますね。
7月の前半はまだ梅雨の時期で、蒸し暑い日が続きます。
体に湿がたまる、体の重だるさ、食欲不振、体のむくみ、気分が落ち込んだりします。
梅雨時は特に脾の運化機能が失調しやすいので、脾の運化機能を高める食材、
余分な水分を取り除く働きのある食材を摂るようにしましょう。
大暑(7/23〜8/7)
大暑 本格的な暑さ、一年で最も暑い時期。
初候:桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)
次候:土潤溽暑(つちうるおってむしあつし)
末候:大雨時行(たいうときどきにふる)
梅雨が明けても蒸し暑く、体の重だるさを感じます。
暑さによる食欲不振、全身のだるさ、疲労感、イライラといった症状が出たりします。
ここで汗について
「心」の液は「汗」です(五行表を参照)。
中医学では「汗」は津液(体の中の水分)が陽気(主に心の陽気)の働きで汗腺から外に出たものと考えます(汗が出るのは腠理を開閉する衛気の機能とも関係します)。
汗と一緒に陽気も外に出すことで熱を追い出し、適度に熱が出れば陽気は体表を閉じさせて汗を止めます。陽気が弱っていたり、汗が出すぎたりすると心の陽気も弱り、そこを邪気が侵すと動悸や息切れがみられ、陽気が弱ると水分代謝に影響し、むくみや尿量の減少などが現れます。
また汗が出過ぎると津液が足りなくなり、血も足りなくなります(血汗同源)。
夏バテの原因
・体の過熱を防ぐ陰の力が弱く、体の熱をさばききれず、体内の熱バランスが崩れる。
喉が渇く、暑がり、のぼせやすい、など。
・夏の湿気も体内の水分代謝のバランスを崩す。水分代謝に関わる脾は湿気と冷えを嫌う。
湿気と冷たい飲み物が脾を弱めると体内に余分な水が溜まる。
むくみ、体の重だるさ、倦怠感、下痢など。
だぶついた水分は熱を吸収しやすく、さらに熱が体にこもっていくので冷たいものを飲む、の悪循環。
・脾は消化にも関わっているので、脾の働きが落ちると食欲が落ち、栄養分が吸収されず、下痢気味で痩せてくる。
・暑さそのもので気が消耗する。
汗と共に気も出てしまうことによる、エネルギーの元である気が不足する。
疲れやすい、やる気が出ない、息切れなど。
夏バテ防止・改善
・体を冷ます陰の力を助ける食材をとる。
・熱を取り除き、暑さを排除、解消する食材をとる。
・不必要な水分を体外へ排出する食材をとる、など。
食材については梅雨・6月の項を参考にしてください。
*うなぎ(鰻):平/甘、脾腎肝。補気・補血し、補腎養肝する。
体力低下、疲労、めまい、耳鳴り、夜盲症、関節痛。
ビタミンAが特に多く、蒲焼一串(約100g)で成人の一日摂取基準の三日分が摂れる。
うなぎの肝(きも)(内臓)も免疫力を高める効果あり。
〈うなぎの山かけ〉滋養強壮、疲労回復、老化防止
うなぎの蒲焼を食べやすい大きさに切って、すりおろした山芋をかけ、ワサビを添える。
うなぎは夏バテ防止に適した食材ですが、夏バテになってしまうと弱った胃腸にうなぎの脂はきつく、胃腸に負担がかかります。そんな時は「どじょう」がいいと思います。
*どじょう(泥鰌):平/甘、脾肺。疲労倦怠、体力減退、食欲不振、むくみ、酒酔いに。
カルシウム(1000mg/100g)はうなぎの8倍、鉄分(5.6mg)はほうれん草(2mg)を上回る。カルシウムや鉄分補給に。
〈どじょう鍋〉、〈柳川鍋〉、ぬめりをとって〈唐揚げ〉。
と書いて気になったので、魚屋さん(二カ所)へ。どじょう、見当たりません。
「ドジョウはないの?」と聞いたら「ないよ〜」。
残念ですが、お店で「どぜう」をいただきましょう。
*あなご(穴子):温/甘鹹、肝脾腎。補気・補血、平肝。疲労倦怠、夜盲症、目のかすみ。
ビタミンAが豊富(500μg)。
市販の煮穴子、焼き穴子、白焼を使って、〈ちらし寿司〉や〈穴子丼〉、〈サラダ〉などに。
*はも(鱧):寒/甘、脾胃肺腎。湿度の高い夏のむくみ、だるさ、関節痛に。
〈はもの山かけ〉
①「はも」は湯引きする。
②山芋はすりおろしたものと短冊に切ったものを用意する。
③①と②を合わせて、きゅうり(寒/甘)やみょうが(温/辛)の千切り、
ネギ(温/辛)(白髭ネギ)を添える。酢味噌や梅肉ソースで。
*山芋:平/甘、肺脾腎。胃腸の働きを高める。慢性的な疲労・倦怠感、胃腸虚弱や下痢の改善。足腰の衰え、頻尿、夜尿症、寝汗、不眠、更年期障害の不定愁訴や性欲減退の改善。
外皮を除いて乾燥させたものは「山薬」(さんやく)という生薬で、方剤では「啓脾湯」、「六味地黄丸」、「八味地黄丸」などに配合されています。
「山のうなぎ」とも言われる。むかごにも滋養強壮作用がある。
とは言え、下痢をしている、食欲がひどく落ちている、胃腸が非常に弱っている時は生食せずに炒めたり、炙ったり、他の野菜、生姜などと一緒に温かいスープやお味噌汁、お粥などにして食べましょう。
〈ハトムギご飯の山かけ〉むくみの改善。美肌効果。
①柔らかく茹でたハトムギをお米と一緒に炊く。
②すりおろした山芋を出汁でのばし、器に盛った①にかけ、海苔、ごまを散らす。
味噌味にしても。
〈山芋のすいとん〉(二人分)養心、滋養強壮。
①山芋(100g)はすりおろし、小麦粉(全粒粉・30g)、塩、粗糖(各ひとつまみ)を加え混ぜ、すいとんの生地を作る。
②鍋に水(500g)、薄塩の梅干(4個)、鶏がらスープを入れ弱火で5分ほど煮る(水量を調整)。
③鍋の火を強火にして①の生地を大きめのスプーンですくい、鍋の中へ静かに落とす。
④すいとんに火が通ったら、小口切りしたネギを加え、火を止める。
⑤器に④を盛り、海苔を散らす。
小麦:涼/甘、心脾腎。血を養って精神を安定。動悸、不眠の改善。
体の熱をとって渇きを癒す。補腎して頻尿や下痢の改善。
梅:平/渋酸、肝脾肺大腸。津液を生じさせ体内を潤す。喉の渇き、咳、多汗、下痢。
疲労回復(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸)。
〈梅干し入り緑茶〉:胃腸の抗菌力を高める。
緑茶に潰した梅干しを入れて飲む。
緑茶:涼/甘苦、心肺胃。体の熱をさます、体に潤いを与える、精神安定。
抗菌作用が強い。カテキンは紅茶や烏龍茶より多い。
*冬瓜:涼/甘淡、肺大腸小腸膀胱。体にたまった熱を取り除く。暑気あたり、口渇。
利水してむくみを改善。体を潤す。肌のできもの、酒酔い。
水分が90%以上でビタミンCが豊富なので(39mg)、夏バテや水分補給に。
皮に近い部分は薬効が高いのでピーラーなどで薄くむく(緑色が残る程度)。
皮や種にも薬効がある。
皮:冬瓜皮(とうがひ)という名の生薬。利尿作用が強い。
種:冬瓜子(とうがし)・冬瓜仁(とうがんにん)も生薬。
冬瓜のスープや冬瓜のお粥を作るときは、よく洗った皮も一緒に煮て、料理が出来上がったら皮を取り除きます。
冬瓜と一緒に涼性・寒性の食材を使うスープでは鶏(温性、補気・お腹を温める)を使い、涼・寒性を中和させるようにします。いつものように生姜やネギも。
体を冷やす作用のあるトマトやきゅうりは生で食べることが多いですが、加熱すると冷やす作用が弱くなるので、体を冷やしすぎず、たっぷり食べられます。
〈きゅうりと豚肉の炒めもの〉
①きゅうりは細切りし、軽く炒め、取り出す。
②卵をときほぐし炒め、取り出す。
③下味をつけた豚肉を炒める。火が通ったら①②を戻して軽く炒め、塩で味を整える。
④青じその千切りを③にトッピングする。
これを素麺/冷うどん(+ゴマだれ)のお供に、あるいは麺と混ぜ合わせる、冷奴に添える、など。(〈ゴーヤチャンプルー〉を真似ました。)
〈なすとオクラとトマトのサラダ〉
①なすは薄切り、オクラは茹でて大きめに切る。ミニトマトは4等分する。
②①を好みのドレシングと和えて冷やしておく。
(例えば、ポン酢、オリーブオイル、ニンニク、アンチョビのドレッシング)。
③②を茹でて、冷やしたパスタ、素麺などの麺類とあわせる。
なす:寒/甘、脾胃大腸。体にこもった熱を取る、血流の改善(シミ防止)、利尿作用、むくみ、食欲不振。
紫色の皮に多くの薬効(ナスニン:抗酸化、抗老化)があるので、皮はむかずに料理しましょう。水にさらすのも短時間で。
オクラ:平/甘・苦、腎脾胃。ビタミン、ミネラルが豊富で疲労回復、滋養強壮して体調を整える。ネバネバ成分が胃腸の粘膜に潤いを与え、消化を高める。食物繊維を含み整腸を促す。便秘の改善。
〈オクラと山芋〉腸内環境の改善 美肌
①オクラは茹でて小口切り、山芋はさいの目に切る。
②①を鰹節と醤油で和える。
*スイカ:寒/甘、心胃膀胱。体の熱を取り除き、暑さを解消する。
暑くて頭がボ〜ッとする時、イライラする時、口の渇きにも効果。
利尿作用により体内に溜まった水分を排出するのでむくみ、重だるさ、
食欲不振を改善。熱中症の予防。
皮(白い部分)は涼性で、実よりも利尿効果が増すので、
漬物、煮物、炒め物、スープの具などに。
体を冷やすので、お腹を下しやすい、お腹が冷えやすい人は食べ過ぎないように。
〈スイカジュース〉:夏バテの解消、熱中症の予防
①氷砂糖(15g)に湯(大さじ4)を加え火にかけ煮溶かす。
②スイカ(300g)は適当な大きさに切り、ミキサーにかける。
③冷やしておいたグラスに②を注ぎ、①のシロップを好みで加える。
〈スイカ糖〉:利尿作用が非常に高い。
スイカを種、皮(白い部分)も一緒にミキサーにかけジュースにして、煮込む。
蜂蜜くらいの柔らかさになるまでひたすら煮込む。
〈三瓜茶〉:むくみ、体が重だるい、食欲がないなどの夏バテ予防。
①スイカの皮、冬瓜の皮、きゅうりの皮は適量を同じ大きさに刻む。
②ざるに広げ、風通しの良いところで干す。
③よく乾いたら、適量を煎じてお茶がわりに飲む。
利水効果の高い皮を捨てずに利用してみましょう。
バランスの良い食事をよく噛んでしっかり食べ、こまめな水分補給を忘れずに、でも飲みすぎず、冷たいものばかりを食べたり飲んだりせず、胃腸を労り、冷房対策を怠らず、適度な運動をし、良い睡眠をとり、気分を晴れやかにして、蒸し暑い夏を元気に過ごしましょう!(読むだけで疲れるかな?)
さて次回
〈季節と養生〉は《秋》季節の特徴です。
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